February 02, 2007
「硫黄島からの手紙」88点。
画面がモノクロで支配され、静かに現代から過去に映画は潜っていく。平和から戦争に潜っていく。「硫黄島」という黒く乾いた島で、血が流れ、爆弾が炸裂し、多くの命が燃えた戦争は、希望が見つからないモノクロの世界。
見る前は、アメリカ人のクリント・イーストウッド監督がどれほど日本人の戦争に対する意識を理解しているかどうかは未知数だった。封建社会の価値観の中、お上のために皇軍として命果てる幸せ、その一方で家族と死別する不幸せ。日本人には美徳というか、独特の死生観を持っている。
この映画のテーマはまさにそこにあるし、その部分の緻密さを忘れてしまえば、日本人の心に届くものはないはずだ。
クリント・イーストウッド関連作品
戦地において、屍を踏み越えて数歩歩いてしまえば、その先には死しかないかもしれない。でも、そんな状況で戦士が歩を進めるエネルギーとなっているのは、祖国や家族への思い。その一点でしかない。
お国のために、彼らは黒い島にきた。敵国が今にも攻めてくる硫黄島。故郷の話や、家族の話。その時間だけは戦争を忘れるけど、話が終わってしまえば戦争という現実が爆音とともに響いてくる。見える無機質な空に家族の声や笑顔を思い浮かばせて、愛情をかみ締める。
戦士たちの息遣いや、言葉や表情で、戦争と戦士たちの係わり合いをみせて、戦争のダークなエネルギーを滲み出している。
そんな今作で絶対はずせないのが二宮和也。
まるで液体の自然な動きのように滑らかな感情表現。映画の中の存在感ではない。俺の隣でささやいているかのような素直な表情を見せる。心に思う家族、そして栗林中将への尊敬の念、そして近い人物の屍。もはや、感情という器から水が今にもこぼれてしまうといっても過言ではないほどの、ほとばしる演技。見事だ。
そして、無名ではあるが二宮演じる西郷の友人役の松崎悠希の演技も印象深い。
この二人の雰囲気が柔らかくて、アクセントとなっている。
語弊を恐れずいうならば、日本人にとって「誰かのために死を遂げる」という行為は、それが愛する存在のためであったなら、幸せなことなのかもしれない。しかし、生きていく、生き抜いてまた愛する存在と時間を過ごすということも幸せだと思う。
戦争はその幸せの選択を限りなく小さくさせて、希望を失わせるもの。この映画は素晴らしい。だからこそ、こころに刺さり、涙を禁じえない。
平和と戦争と、人間にとっての幸せを深く深く考えさせる素晴らしい作品。
88点(100点満点中)
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この記事へのコメント
そうですね。dkさんの表現にはドキリとする鋭い表現がありますね。
二宮クンの演技は確かに仰る通り。それから「友人役の松崎悠希」?・・・今あらためて私もそう思いました!
洞窟での彼の笑顔が思い出されます。
この映画は監督の素直な感情が滲み出ているのかもしれません、今思えば。
もう一度観てみたいなって思っちゃいました┌|∵|┘



