February 18, 2007
「それでもボクはやってない」96点。
これはどえらい映画だ。
あんまり日本の社会的な作品には、相性がよくないのでこの作品も公開当初は見るかどうかは微妙だった。アメリカやヨーロッパの社会的な作品には、ストイックな表現があるし、あえて社会の暗部を切り取る作品が多いので説得力があるが、日本のものには、どことなくオブラートに包んだような歯がゆさを感じていた。
もちろん、監督が周防監督なので、その部分がかなりのアドバンテージがあったものの、多忙に身を任せて見るのは公開してだいぶ経ってからだった。
不覚だったね。こんな映画は、公開初日に見るべき作品だ。まだまだ、いかんね。
映画は、映像と音声とで説得力を構築していく存在だ。この映画はまさにそんな「映画の生態」を隅々まで知り尽くしているとしか思えない。映画が始まったときのテンションの高さ。張りのある警察官の声と、警察署内の閉塞感。その交錯で、映画は一気に階段を駆け上がっていくような力強さを帯びる。
日常の中の見えない落とし穴。
そんな真の意味での恐ろしさを、じわじわと提示していく。痴漢行為で拘束される場面で、サラリーマンをスクリーンにして、主人公の拘束場面に移っていく。何も分からないまま、拘留され、ルールに従う。ただ、そのルールに従うだけでは疑いが晴れるわけではないという蟻地獄の入り口であることをこの映画は少しずつ確実に理詰めしていく。
とてつもなく力強い。
周防監督関連作品
紙が摺れる音。木の板の床を歩む音。感情が帯びて震える声。
映画に出てくるありとあらゆるもの全てをもって、映画を誘っていく。音と重ねたりわざと外したりする映像が、見ているものの心の感情を撫でていく。そうかと思えば、急な切り返しで残酷な状況をありのまま提示してみせる。
変幻自在な演出術に、驚かされる。「周防監督ってこんなにすごいの?」って目が点になった。
人それぞれが感じている事実。それが「真実」といわれるものだ。それを見つけ出すなんてよく考えれば無茶な話だ。しかも、その真実というものは誰かの心の中にあり、その時点ですでに先入観がこべりついている。
裁判は、特に日本では神聖なモノだと崇められている感があるけど、実はそれは人間のありのままの姿が露呈されるから神聖なものなのではないだろうか。決め付けてしまう人、無実を叫ぶ人、被害を受けた人、それを眺める人。裁判という作業は、裁判に関している人々の中で誰が一番説得力があって、本当っぽいのか。裁判とは、それを見極めるコートに過ぎない。それが限界だ、人間がする作業なのだから。
俺はこれほど計算され、人間の血管の躍動感さえも帯びた素晴らしい日本映画を見たことがない。しかも、これが、社会の現実を切り取っているというメッセージを確実に抱え込んだ映画であるなんて、信じられない思いだ。
周防正行は映画を知り尽くしているとしか思えない。大監督だ。天晴れ。
96点(100点満点中)
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この記事へのコメント
ブログにコメント&TBありがとうございました。
シャルウィーと違ってとっても社会派の映画でしたが、前作以上にぐいぐい引きつける映画でしたね。
ドアに肘が当たってるのに、有罪と判決する裁判官の論理が理解できませんね。
お返事遅れてすいません(^^;
>ドアに肘が当たってるのに、有罪と判決する裁判官の論理が理解できませんね。
たしかに。
かなり曲がった解釈ですね。でも、ああいう風にいってしまうと分からないこともないけど。。。
裁判は怖いですね。。。
コメントありがとうございます!
返事が遅れてしまってすいません。。。
かなり社会性が高いのでいままでの周防作品ではなかったテーマですよね。
でも、俺はかなり高いレベルで映画にしているので違和感は全く感じなかったっすね〜┌|∵|┘



