July 05, 2008
その魂は、えげつない壁をぶち壊し、また昂揚する。『クライマーズ・ハイ』。
この映画は、それを澄み切ったものにしてくれる作品だ。
新聞社というのはジャーナリストだけがいるところではない。正確に言うとジャーナリストとビジネスマンが同居闊歩している場所。紙面の品質と、発行部数。その相反するかに思える要素があのモノクロの世界には封じ込められている。
日航機墜落事故の全権デスクに抜擢の悠木。
彼は記者としての嗅覚と信条に徹してことを進めていく。現場の特定、事故原因の追求。自分が信頼した部下を、隙のない指示で能動的に動かしていく。ただ悠木の上の新聞社の管理職は、まったく別の観点で判断を下していく。
そこで悠木は憤り、怒号を放ち、絶望を舐める。
しかし、彼は大いに反発し諦めない。
23年後、悠木はそのころの様子を山を登りながら反芻する。あのころには感じなかった意味、想い、そして遠い息子を想いながら。反芻なかなか止まない。。。
この映画は、とにかく臨場感がすごい。
編集部の躍動する感じ。いろいろな要素が同時進行で動き、一つに決する能動的なあのスペース。何度も言い争いが繰り返され、上司部下関係なく感情むき出し意見をぶつけ合う。そういういい意味での衝突の存在を、この映画はとにかく前面に打ち出し、それが男たちの魂としてはっきりと輪郭を形成していく。見事としか言いようがない。
その臨場感で堤真一、堺雅人、尾野真千子、遠藤憲一、田口トモロヲ、でんでんなどが活き活きと表現を繰り返す。それがだんだんと一つの連帯感や、組織、仕事の方向を見せ付けていく。そこまで言及していくこの映画は、本当に凄いと思う。
特に堤真一、堺雅人、遠藤憲一は特筆すべき素晴らしさがある。
堺雅人は感情を抑制して、ことを進めるプロの表情を刻んだ。
堤真一と遠藤憲一は映画のクライマックス。2人の完璧な眼光の動きには言葉がない威圧感。あれほど隆々とした濃厚なシーン、最近の邦画では見てない。
組織と個人。仕事の質と価値。自分の正義と子供の楽しみ。そして、失われた多くの命と、生きている自分自身。
忘れられないあの悲劇を包んだ昂揚する時間、そして遠く年月を経て導きだされる時間。複雑に絡み、徐々に意味を成していくその2つの時間の種類。
この映画は、そんな時間の違いから見える「人の生き様」を深く見つめた素晴らしい作品。ぜひ、劇場で見て欲しい作品である。
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